マリオネット・マンドリンオーケストラ 4thコンサート

文:「奏でる!マンドリン」編集部

2010年7月31日(土)pm4:00~、大阪の高槻現代劇場大ホールにてマリオネット・マンドリンオーケストラ 4thコンサートが開催された。ステージには約80名のメンバーが上り、客席は1200人を越えるお客さんで埋め尽くされ、大変な盛況感のあるコンサートとなった。

全体写真
 マリオネット・マンドリンオーケストラは、ポルトガルギターのパイオニア・湯淺隆とマンドリン奏者・吉田剛士によるアコースティックユニット≪マリオネット≫のオリジナル楽曲を専門に演奏するオーケストラとして、吉田剛士指導・指揮のもと、2006年に結成された団体。日本人としての感性と、ラテン系撥弦楽器の魅力を生かした曲作りを進めてきたマリオネットの楽曲を、新たに合奏曲として発展させた独自のレパートリーで、マンドリン合奏の新たなスタンダードを提案している。

毎回、数多くの新しいレパートリー(全曲マリオネットのオリジナル作品!)を演奏するが、今回も数多くの新しいレパートリーを交え、定番曲との組み合わせで充実したステージを披露した。また、ゲストに中国古筝デュオの鶯と燕(インとイェン)を迎え、華やかな共演を行なった。インとイェンはNHK教育テレビ「テレビで中国語」にレギュラー出演中の双子姉妹として人気上昇中のお二人。

インとイェン

鶯と燕(インとイェン)

 演奏曲目は以下の通り。

第1部 オーケストラ演奏

  • 夏の終わりに (作曲:吉田剛士  編曲:酒井国作)
  • 小組曲「ふな屋」 (作曲:湯淺隆・吉田剛士  編曲:前田肇)
  • 私は知っている (作曲:湯淺隆・吉田剛士  編曲:酒井国作・吉田剛士)
  • 蒼い海の彼方へ (作曲:湯淺隆  編曲:前田肇)
  • ディスコ・モスクワ (作曲:吉田剛士・湯淺隆  編曲:内藤正彦)*
  • 花の葬列 (作曲:吉田剛士  編曲:内藤正彦)

第2部
カルテット演奏
(1st 森本 和幸  2nd 榎 素代子  Dola 榎 和哉  Guitar 谷 治毅)

  • 石の花 (作曲:湯淺隆  編曲:森本和幸)

ギターアンサンブル演奏
(ギターパート全員)

  • 風船のゆくえ (作曲 湯淺隆  編曲:森本和幸)

オーケストラ演奏~ゲストと共に
ゲスト:鶯と燕(インとイェン) 中国古筝デュオ

  • 唐街雨情 (作曲:湯淺隆  編曲:宇都宮正人)
  • 夢は黒潮に乗って (作曲:湯淺隆・吉田剛士  編曲:御崎恵)

オーケストラ演奏

  • 舞い落ちてきた天使 (作曲:吉田剛士  編曲:内藤正彦)
  • アトランティック・ロマ (作曲:湯淺隆  編曲:酒井国作)
  • 東西巡礼 ~ザビエル幻視~ (作曲:湯淺隆  編曲:酒井国作)
  • 南蛮渡来 (作曲:湯淺隆  編曲:内藤正彦)

アンコール

  • マンドリン酒場の夜 Version 2010 (作曲:湯淺隆  編曲:吉田剛士)*
*共演 パーカッション:チーチョ西野
司会:池田奈月

演奏曲目はいずれもマリオネットのオリジナル作品をマンドリンオーケストラ用に編曲したもので、かつてTV番組やCMなどで使われた作品も多い。
「夏の終わりに」は93年「日本経済新聞」TVCM曲として使われた軽快で爽やかな曲。
「蒼い海の彼方へ」はかつてマリオネットが音楽を担当した映画「エイジアン・ブルー ~浮島丸サコン」(1995年制作)の挿入曲。
すっかりマリオケの定番曲の一つとなった「ディスコ・モスクワ」は独特のノリの良さが好評で、他団体もすでに取り上げ始めている。
世にクラシックをポピュラー風にしたアレンジは多いが、内藤正彦編曲の「花の葬列」は逆に原曲のエッセンスを蒸留して、よりシリアスに格調高く仕上げた特異な編曲。ドラマティックな合奏作品に仕上がっている。

第2部の最初はお決まりの小編成コーナー。マリオケ第1回目から小編成ステージの編曲を担当しているメンバー森本和幸の編曲で、「石の花」(カルテット演奏)と「風船のゆくえ」(ギターアンサンブル演奏)。カルテットではソリスティックな魅力が際立ち、ギターアンサンブルではクラシックギターの優しい音色がコンサート全体の中でのどかで新鮮な印象を与えた。

カルテット演奏

カルテット演奏


ギターアンサンブル演奏

ギターアンサンブル演奏

 その後、中国古箏デュオのインとイェンを迎え、オーケストラの伴奏で「唐街雨情」「夢は黒潮に乗って」の2曲を演奏した。
「唐街雨情」はグラシェラ・スサーナが歌い、2007年「NHKラジオ深夜便のうた」に選ばれた曲。中国古箏の音色とマンドリンオーケストラの織り成すサウンドが好評であった。
また、プログラムにはないが、インとイェン単独で中国古典曲「戦台風」を演奏。圧倒的なテクニックと音楽性を披露した。
なお、今年マカオ観光局音楽大使の称号を得たマリオネットのポルトガルギター奏者、湯淺隆もステージ上で挨拶。インとイェンとのトークも盛り上がり華やかなステージになった。

インとイェン共演

湯淺隆(中央)

湯淺隆(中央)

 今回のコンサートがマリオネット「マカオ旅行」キャンペーン対象コンサートであることと、「日本ポルトガル修好通商条約150年記念」イベントであることにちなみ、コンサート終盤は、大航海時代、南蛮をテーマにした3曲「アトランティック・ロマ」「東西巡礼」「南蛮渡来」を組曲風に続けて演奏した。
最後の「南蛮渡来」は93年~94年「沢の鶴」TVCM曲として採用されたマリオネットの代表曲。最近ではマカオ政府観光局のテーマ曲として使われている。今回新しく演奏した、内藤正彦氏による新しいアレンジは弾き応えも聴き応えも充実したものであった。
アンコールでは昨年も演奏した「マンドリン酒場の夜」の新バージョン「Version2010」を演奏。パーカッションのチーチョ西野も参加して楽しくノリのよい演奏でエンディングを飾った。
回を重ねるごとに、結成時に聞かれた「本家マリオネットと比べて云々」という感想は影を潜め、「マリオネット・マンドリンオーケストラ」という独自の存在感を強め、逆に大合奏ならではの魅力も聴衆に届き始めているようである。

なお、このレポートは「奏でる!マンドリン」HP、および「ギターの時間」HPでも紹介されています。

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